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2015年7月25日土曜日

デジタルカメラ メーカー別タイプ別 販売シェアの推移【資料】

今なお世界シェア1〜3位を国内メーカーが独占し「日本モノづくり最後の砦」と呼ばれているデジタルカメラ市場が急速に縮小しています。

デジタルカメラ メーカー・タイプ別 販売数の推移


  • キヤノンは1月〜12月で集計。他メーカーは4月〜翌年3月までの集計。そのため右下がりの市場ではキヤノンが他社と比較しやや優位な数値となる。
  • 2014年度の決算発表でパナソニックは具体的販売台数を公表していない。
  • 各社IR資料、米IDC、日本経済新聞調査(日経推計含む)、週刊ダイヤモンド誌、東洋経済誌、ロイターなどを参考。当ブログ推計値(ソニーの内訳。富士フイルムとパナソニックは2014年度実績や2015年度販売見込みを非公開)を含む。

デジタルカメラ 国内メーカーシェアの推移

2010年上位3社で65.8%のシェアを占めていたが、2015年の販売見込みにおいてCanonとNikonの2強で67.1%を占め寡占化が進む

理由はソニーのコンパクトカメラが激減したためです。


コンパクトデジタルカメラ 販売台数の推移


メーカー 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度
Canon 2,100 1,865 1,830 1,320 903 700
Nikon 1,426 1,737 1,714 1,116 668 610
Sony 2,390 1,892 1,504 964 615 357
FUJIFILM 1,160 1,155 840 450 145 90
Panasonic 962 890 540 297 139 87
Olympus 910 752 510 271 78 48
Casio 300 230 195 200 140 120
RICOH 190 176 119 60 40 27
8社計 9,438 8,697 7,252 4,678 2,728 2,040
ニコンの見通し - - 6,808 4,700 2,800 1,920
CIAPの見通し - - - - - 2,170

8社平均で2010年比でコンパクトデジタルカメラ21.6%減です。


デジタルカメラの販売は2010年の1.2億台がピークでした。キヤノンとソニーがコンパクトデジタルカメラで2,000万台超の販売、その他の下位メーカー4社も1,000万台前後の販売でした。当時、カメラ業界では出荷台数1,000万台を下回ることは部品供給の点から価格競争力を維持できない分水嶺だと言われていた頃です。

CIPA(一般社団法人カメラ映像機器工業会)はデジタルカメラをレンズ一体型(いわゆるコンパクトカメラ)とレンズ交換型(ミラーレスや一眼レフ)に分類し出荷や生産台数を公表しています。

2015年に2月に行われたCIPA・GfKグローバルマーケットセミナーで、デジタルカメラの2015年出荷台数見込みは 3,470万台と見通しました。2010年の出荷台数は12,146万台でしたからデジタルカメラの市場はわずか4年でピーク時の28.6%に縮小しています。さらに大手8社の販売見込みが21.6%減です。

スチルカメラ 出荷台数とスマートフォンの販売台数の推移


2011年比販売台数 71.3%減の主因はコンパクトデジタルカメラ市場がスマホ(スマートホン)の台頭により壊滅したことによるものと言われています。販売のピークは2010年度の9,438万台で2014年度の販売実績は約2,812万台(29.8%)。一方、レンズ交換型の販売のピークは2012年度の1,899万台で2014年度の販売実績は約1,523万台(80.2%)です。


またレンズ交換式カメラも、2012年下半期からミラーレスカメラの成長が鈍化し2013年に前年割れとなりました。しかしそこで底を打ち2014年の販売で好転しました。

2013年にはこれまで好調であった一眼レフカメラが前年割れになり、2014年にはキヤノンがレンズ交換式で前年比 83.1%、2強の一角であったニコンも前年比 80.9%の販売になり主力の一眼レフが大苦戦中です。

相次ぐ下方修正

キヤノン

  • 2015/07/27 第二四半期決算発表において2015年12月期の計画は、レンズ交換式カメラを580万台(前年同期は636万台)、コンパクトカメラを700万台(同903万台)とする目標を据え置いた。田中副社長は「デジカメの販売は下期後半の回復を見込む」と強調。昨年4-6月期から2ケタ減少が続いていたレンズ交換式カメラは今年4-6月期で1ケタ減へと改善しており「近いうちに底を打つ」と述べた。また、コンパクトカメラについても「ハイエンド機種の台数は増えている」と指摘した。
  • 2015/04/27 第一四半期決算発表においてレンズ交換式カメラの対前年同期台数伸び率が -22%であることを公表。これは2015年度の市場見通し-8.6%の2.6倍超の落ち込みである。特にEOS Kissなどの入門機が売れていないのが深刻です。
  • 2015/04/27 通期のレンズ交換式カメラの販売を従来計画の640万台から580万台(前年同期は636万台)に下方修正した。コンパクトカメラの市場縮小も続いており、販売計画を従来の780万台から700万台(同903万台)に引き下げた。キヤノン15年12月期の売上予想を下方修正、ユーロ安やカメラ販売減で | Reuters
  • 2015/04/21 日本経済新聞 「キヤノン、1〜3月営業益15%減 欧州でデジカメ不振」ロシアなどで消費が落ち込み、一眼レフ中心のレンズ交換式デジカメの販売台数が約2割減った。と報じる。
  • 2015/01/29 2014年12月期 決算説明会から日経新聞が「スマートフォンとの競合で苦戦が続いていたデジカメにも明るさが見えてきた。コンパクト型の販売台数は前期比14%減の780万台にとどまるが、収益源である一眼レフなどのレンズ交換式デジカメは、640万台を見込んでいる。(キヤノン2%増益 15年12月期、「大型商談が順調」 :業績ニュース : 企業 : マーケット :日本経済新聞)キヤノン円安追い風、3期連続増益を計画 | ロイター | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
    2015年の販売見込みも掲載されていますが、キャノンの販売見込みは大手8社で甘く、四半期の決算発表で下方修正が続きます。2014年度も期首当初計画の達成率はレンズ交換式が 84.2%、コンパクト 83.8%です。
  • 2015/1/9 産経新聞の御手洗会長兼社長インタビューで「主力のデジタルカメラ事業に関して、日欧などで販売が苦戦している一眼レフは、「去年から今年が底とみている。それ以降は手堅く伸びるだろう」コンパクトデジタルカメラも、「今が底ではないか。スマートフォンでは写せない高画質の高級機や超望遠タイプなど、付加価値の高い機種は好調で、市場ではスマホとのすみ分けがはっきりしてきた。スマホでカバーできないカメラはコンスタントに伸びていくだろう」とした。
  • 2014/10/28 第3四半期決算発表をうけて、日本経済新聞とロイターがレンズ交換式 700万台→650万台に下方修正をしたことを報じた。田中稔三副社長(CFO)はインタビューで「欧州景気の停滞が消費者、ビジネス向けともに足を引っ張っている」「コンパクトカメラについてシナリオ通りにハイエンドにシフトして台数が減っている。底打ちはまだ1-2年先になるだろう」「レンズ交換式カメラは今年から来年くらいで底打ちすると思う」と語った。これによりレンズ交換式は期首の販売計画比で-14.5%となりキャノンの一人負けが鮮明となった。
  • 2014/07/24 第2四半期決算発表をうけて、東洋経済オンラインがレンズ交換式 760万台→700万台、コンパクト1050→950万台に下方修正したことを報じた。
    インタビューで田中稔三副社長(CFO)は、コンパクトカメラについては「今年がボトム」、「レンズ交換式については「スマートフォンに削られたとは考えたくない。欧州やアジアの景気の影響などで一時的に需要が後退している」との見解を示した。
  • 2014/01/29 2013年の販売実績をレンズ交換式 800→765、コンパクト1400→1320万台 下方修正(デジカメ国内7社、世界販売3割減 13年度見通し : 日本経済新聞)
  • 2013/10/24 第3四半期決算発表をうけて東洋経済オンラインが、2013年販売見込みをレンズ交換式 900→800万台 下方修正したことを報じた。田中稔三副社長(CEO)は「欧州の経済低迷はいずれ解消すると期待していたが、相変わらずの状態が続いている。あとは中国中心のアジア(の低迷)も大きな要因」「現に日本では先行して景気の明るさが見えてきて、カメラが売れ始めている。各地でも景気回復とともにカメラが売れることを期待している」「コンパクトカメラはスマートフォンとは競合するつもりはない。コンパクトカメラの技術はあるので、新しい市場規模の中でのバランスを考えたい」と答えた。期首の販売計画比で -16.8%と落ち込む。
  • 2013/07/24 レンズ交換式 920→900、コンパクト1450→1400万台 下方修正
  • 2013/04/24 コンパクト1700→1450万台 下方修正
  • 2014/10/28 レンズ交換式 700→650 下方修正
  • 2014/07/24 レンズ交換式 760→700、コンパクト1050→950万台 下方修正
  • 2014/01/29 2014年販売見込みをレンズ交換式 800→765、コンパクト1400→1320万台の販売実績を下方修正
  • 2013/10/24 レンズ交換式 900→800万台 下方修正
  • 2013/07/24 レンズ交換式 920→900、コンパクト1450→1400万台 下方修正
  • 2013/04/24 コンパクト1700→1450 下方修正

ニコン

  • 2015/05/14 2014年度決算発表 コンパクトカメラの販売台数は-8.7%の425万台。レンズ交換式カメラは-7.8%の610万台。ニコン デジタルカメラ 減収減益ながらもシェアは拡大 
  • 2015/04/04 日本経済新聞 「一眼レフとミラーレス一眼を合わせた「レンズ交換式」デジカメの販売台数が465万台(19%減)と計画並みを確保できたことが大きい。」
  • 2015/02/05 2015年3月期 第3四半期決算発表においてレンズ交換式デジタルカメラ2015年度販売見込みを490万台→465万台へ下方修正
  • 2014/11/06 レンズ交換式 505→490 下方修正。期首の販売計画比で -9.3%と落ち込む。
  • 2014/08/14 東洋経済オンラインが、今年に入って、キヤノンがシェア拡大に大きく舵を切る。その影響について、伊藤純一副社長は、「欧州、特にドイツを中心に価格攻勢を仕掛けられ、競争環境が悪化した。その影響で台数を落としている」と説明した。
  • 2014/08/07 レンズ交換式 540→505、コンパクト900→750万台 下方修正
  • 2014/05/13 2014年度販売見通し レンズ交換式カメラ540万台、コンパクトカメラ900万台へ下方修正
  • 2014/05/13 2013年度レンズ交換式 600→575、コンパクト 1,150→1,116万台の販売実績を下方修正
  • 2014/02/06 レンズ交換式 620→600万台 下方修正
  • 2013/11/07 レンズ交換式 655→620万台 下方修正
  • 2013/08/08 レンズ交換式 710→655、コンパクト 1400→1150万台 下方修正

ソニー

  • 2015/07/30 2015年度 第1四半期決算発表において4月の販売見通し570万台 → 590万台へ上方修正。ただし内訳は不明
  • 2014年度 連結業績概要(PDF)でデジタルカメラのFY15見通し570万台(売上高 300億円減収、営業利益 47億円減益)
  • 2015年2月18日、ソニーは2015〜2017 年度中期経営方針を発表しました。デジタルカメラは「安定収益領域」に分類され、大規模な投資は行わず、 着実な利益計上、 キャッシュフロー創出を目指し将来の分社化を目指すとあります。ソニーは高性能ミラーレス一眼カメラやハイレゾリューション・オーディオなどに代表される新しい付加価値の提案を引き続き行っていきます。既存の技術アセットを活用し大規模な投資は行わず、固定費の最適化や在庫コントロールの強化により、利益と投下資本効率の最大化を図ります。
  • ソニーは2015年2月4日に2014年度 第3四半期 業績説明会を開催しデジタルカメラの販売見込みは10月に発表した上方修正の840万台を維持することを発表した。
  • 2014/10/30 デジタルカメラ 800万台→840万台へ上方修正
  • 2013/05/14 2013年度 デジタルカメラ 1,150台の販売実績,内訳は推計
  • 2013/08/14 デジタルカメラ 800万台販売見通し,内訳は推計
  • 2014/02/06 販売見込み1200万台(950と250と推計)を維持すると発表
  • 2013/10/30 デジタルカメラ 1250→1200万台 下方修正
  • 2013/08/01 デジタルカメラ 1350万台→1250万台 下方修正

富士フイルム

  • 2015/07/30 光学・電子映像事業の電子映像分野では、デジタルカメラの高級機へのシフトに伴い販売台数が減少し、売上は減少したものの、プレミアムデジタルカメラ「X シリーズ」の販売が好調に推移しました。具体的販売数は公開せず
  • 富士フイルム | コンパクトカメラは大幅減、Xシリーズは販売増で利益に貢献
  • 2014/10/22 第3四半期の決算でデジカメ事業の営業損益は数億円の黒字と発表
  • 2014/07/24 4〜6月期前期は10〜20億円赤字だったと報じる
  • 2014/05/01 2014年度の販売目見通し200万台
  • チェキ 2013年度 230万台の実績、2014年 300万台を見込む
  • 2014/05/01 500万台→460万台 販売実績を下方修正
  • 2013/10/31 700万台→500万台 下方修正

パナソニック

  • 2015/07/29 第1四半期決算発表においてカメラについて言及せず
  • 2015/02/03 第3四半期決算発表でAVCネットワークスの売上高は、8,278億円(前年同期比1%減)となりました。 プラズマディスプレイパネルやデジタルカメラなど、課題事業の撤退や事業領域の絞り込み に伴う販売減はありますが、直近の3ヵ月間では、円安のプラス影響もあり増収へ転じてい ます。営業利益は、堅調なBtoB事業から生み出される増販益に加え、課題事業の事業構造 改革の効果が寄与し、前年同期に比べ大幅増益の216億円となりました。
  • 2014/11/13 日経が2015年3月期の販売台数は前期比35%減の209万台と報じる。(261→209へ下方修正)。しかし富士フイルムを抜き国内4位へ。
  • 2014/07/31 パナソニックは第一四半期の決算でAVCネットワークスは81億円の赤字と発表
  • 2014/06/14 読売新聞が2013年度は324万台の出荷台数で85億円と2年連続赤字、2014年度は30億円の黒字を計画していると報じる
  • 2014/05/15 日経が2014年度のデジタルカメラは 261万台と報じる
  • 2014/02/20 デジタルカメラ 400→350万台 下方修正

オリンパス

  • 2015/05/08 2014年度決算発表。レンズ交換式 52万台 → 51万台、コンパクト 80万台 → 78万台と計画は未達。2015年度のレンズ交換式 48万台、コンパクト 48万台。
  • 2015/02/07 第3四半期決算発表でレンズ交換式 63万台 → 52万台へ下方修正(コンパクト 80万台は据え置き)
  • 2014/11/07 第3期決算発表 コンパクト 100万台 → 88万台へ下方修正
  • 2014/11/07 映像事業は前年同期の27億円から今期は46億円の赤字が拡大
  • 2014/05/15 日経がレンズ交換式 63万台,コンパクト100万台と報じる
  • 2014/05/09 2014年度はコンパクトを271万台から100万台へ縮小。35億円の赤字見通し
  • 2014/05/09 デジタルカメラ344万台→322万台、92億円の赤字
  • 2014/02/07 レンズ交換式 73→63、コンパクト 278→275万台 下方修正
  • 2013/11/08 コンパクト 270万台→278万台 上方修正

カシオ

  • 2015/07/29 第1四半期決算発表で「デジタルカメラは独自のハイエンド製品の拡大により 安定した利益を確保しました。」
  • 2014年7月30日の第一四半期の決算発表で独自のハイエンド商品特化により利益確保と発表
  • 2012年度 195万台、2013年度200万台、2014年度は出荷台数、販売金額ともに増加と見通す(ただし5月15日の日経では140万台と報じる)
  • デジカメ事業は2008年3月期以来の営業黒字となる見通し。

リコー

  • 2013年度 コンパクト 60万台でレンズ交換式 25万台。
  • 2012年度 コンパクト119万台、レンズ交換式 29万台。

韓国サムスン

  • 2012年の出荷台数ではあるが 1,130万台(コンデジ 1100万台、レンズ交換式 30万台)

2013年12月のロイターの Japan mid-tier camera makers face shakeout as smartphones shatter mirrorless hopes においてレディ・スイス証券のイメージング担当アナリスト 吉田優氏は

"Only those who have a strong brand and are competitive on price will last - and only Canon, Nikon and Sony fulfil that criteria," added Yoshida.

と、生き残るのはキヤノン、ニコン、ソニーだけだと分析しています。


下位メーカーはさらに厳しく

デジタルカメラ事業 2013年度営業損益

キヤノンは1月~12月で集計。他メーカーは4月~翌年3月までの集計。
グラフは大手8社の2013年度におけるカメラ事業単独の一部推計の損益です。

利益をあげているのは上位3社。下位メーカーは赤字か数億円程度の黒字と厳しい状況です。

2010年度はデジタルカメラの営業利益率は10%超でしたが、2012年度には6社中4社が赤字事業となる非成長事業に陥りました。

レンズ交換式カメラを唯一販売していないカシオは決算発表でデジタルカメラが利益に貢献したとありますから黒字であったと思われます。

2014年度販売見込みは前年度比3割減


市場見通しはニコンの第3四半期決算資料より
2014年度第3四半期の決算発表が11月に行われました。

底が見えないコンパクト

キヤノン、ニコンは下方修正に追いやられました。ソニーは唯一上方修正しましたが、オリンパスはコンパクトを下方修正を行いました。その結果、8社平均で3割減と厳しい状況です。

コンパクトデジタルカメラは未だに底が見えず、富士フイルムとオリンパスは前年比 7割減、8社平均でも4割減です。

ミラーレスは底から脱した?


ソニーは第3四半期決算期でレンズ交換式カメラの販売見込みを 40万台上方修正しました。

2014年度に黒字転換を目論んでいた富士フイルムは第3四半期の決算発表で高価格帯のXT-1が販売計画の2倍の2万台/月と好調で、第3四半期の決算で黒字化を達成したと発表しました。

パナソニックはLUMIX DMC-GH4は「計画の2.5倍程度で売れています」(デジカメ事業は黒字化できる (2ページ目):日経ビジネスオンライン)とインタビューで答えています。

販売台数としてはミラーレスは前年比増です。しかし事業となると別です。コンパクトの不振をミラーレスで補いきれなかったためです。

パナソニックとオリンパスのマイクロフォーサーズ規格陣営は第3四半期の決算発表でオリンパスが赤字を拡大。パナソニックは第1四半期に81億円もの赤字をデジカメを含むAVC事業で出しました。

そのため、ミラーレス陣営であってもカメラ事業として勝ち組はAPS-Cフォーマットのソニーと富士フイルム、負け組はマイクロフォーサーズ陣営と2極化になりました。

負け組の条件 その1 「コンデジ比率が高かった」

上位2社に対しシェア3位以下のコンパクトデジタルカメラの比率が高くスマホの浸食をもろにうけた形です。最も影響をうけたソニーは2010年には首位を狙える2位でしたが、シェア3位に転落しました。

2014/11/7現在
企業名 コンパクトカメラ比率
2010年度 2014年度見込み
キヤノン 78.1% 59.4%
ニコン 76.9% 60.5%
ソニー 93.0% 73.2%
富士フイルム 100.0% 72.5%
パナソニック 93.2% 73.2%
オリンパス 91.5% 55.9%
カシオ 100.0% 100.0%
リコー 90.0% 66.7%
8社平均 87.3% 64.7%

6年で7割減のコンパクトデジカメラ市場

これまでも、2009年のリーマンショック、2011年にはソニーやニコンなどのカメラ製造拠点であるタイの大洪水による長期生産停止などカメラメーカーを襲いましたが、その後は順調に販売は回復するかのようにおもわれていました。しかし、潮目となったのは2011年10月に発売されたiPhone 4sです。

iPhoneはこれまで200〜500万画素のイメージセンサーが、iPhone 4sでは1/3.2型(4.5×3.4mm)で 800万画素の裏面照射型CMOSイメージセンサーに刷新され、1080pのフルHD動画撮影機能や、F値がF2.4と明るく焦点距離は35mm相当の画角になる広角レンズを搭載しました。世界中で人気となったiPhone 4sは10〜12月の3カ月間で約3,700万台もが販売されました。
  • 2007年 iPhone 200万画素
  • 2008年 iPhone 3G 200万画素
  • 2009年 iPhone 3GS 300万画素
  • 2010年 iPhone 4 500万画素
  • 2011年 iPhone 4S 800万画素
  • 2012年 iPhone 5 800万画素
さらに、ソニーはデジタルカメラで培った先端技術を搭載したスマートフォンXperia Z1を2013年に発売しました。Xperia Z1のカメラには 1/2.3型、約2,070万画素の積層型CMOSイメージセンサー、F値がF2.0と明るく焦点距離 27mmm相当の画角の広角Gレンズ、画像処理エンジンBIONZ(ビオンズ)for mobile、ソニーがカメラ開発で培ってきた技術を搭載し単焦点レンズであるといった点をのぞきコンパクトデジタルカメラと同等以上の性能になっています。ただそのソニーのスマホがソニーの赤字の元凶と皮肉な構図になっています。

負け組の条件 2 「ミラーレスの誤算」

2010年の日経エレクトロニクス誌にはミラーレスカメラが市場を席巻し、キヤノンとニコンがシェアを低下させるという〝夢〟を描いていました。


翌年の2011年に富士キメラ総研は「2015年にはミラーレスが一眼レフを抜く。」「2015年、ミラーレスは1800万台規模」と予測していました。

しかし、CIPA統計によると、2011年にニコンが参入、2012年にキヤノンが参入したものの、2012年度は386万台、2013年度332万台前年度比86.0%でレンズ交換式カメラに占める割合も19.4%と伸び悩んでいます。

その理由のひとつが世界最小最軽量にこだわった商品展開にあると言われています、「ガラパゴスするミラーレス」(日経ビジネス誌 2014.04.28)

米国では小さすぎる

注目すべきは、地域別販売台数の内訳だ。レンズ交換式に占めるミラーレスの割合(2013年)は、日本が38%だったのに対して、日本以外の地域はその半分以下の16.4%にとどまった。つまり、日本以外では売れていないのだ。

特に厳しいのが、同10%の米国。カメラ愛好家の米国人男性は、「ミラーレスは小さすぎて扱いにくい」と話す。欧州でもこの傾向は強い。アジアでは一部地域で需要はあるが、ヒットには至っていない。販売地域の事情に合わせた製品開発が十分でない面もある。

レンズとボディーを接続するレンズマウントの規格が各社で違うことも、ミラーレスの普及を妨げている。パナソニックとオリンパスが統一している以外は、メーカーによって規格はバラバラだ。ニコンやキヤノンの一眼レフのレンズを、基本的には他社のミラーレスに接続できない。

日本だけで需要がある独自の市場──。従来型の携帯電話や日本独自規格を持つ軽自動車のように、ミラーレスも「ガラパゴス化」してしまうのか。「その可能性は十分あり得る」。JPモルガンの森山久史氏はこう警鐘を鳴らす。

では、ミラーレスがガラパゴス化してしまった場合どうなるのか。一眼レフで高いシェアを持つキヤノンとニコンの痛手はまだ少ない。一方、コンパクトデジカメ市場がスマートフォン(スマホ)に食われ縮小する中、「打倒一眼レフ」でミラーレスに開発資源を集中する中堅メーカー各社にとっては、一層厳しさが増す。日本で人気でも、世界のレンズ交換式市場の6割弱を占める欧米で需要がなければ、稼げるカメラ事業になることは難しいからだ。

近日中にカメラの老舗、独ライカカメラがミラーレス市場に参入するとの噂もある。「市場全体のパイが小さいのにプレーヤーが多すぎる」。森山氏は最後にこう指摘した。
コンパクトデジカメ市場の縮小に加え、ミラーレスの低迷。逆風の多いカメラ業界では、いつ業界再編が起こってもおかしくありません。例えばソニー、JDI(ジャパンディスプレイ)、パナソニックらが有機ELの新会社JOLEDを2015年1月に設立します。

ミラーレス2014年は反攻の年へ

小さすぎると欧米で嫌われたミラーレス陣営。ガラケーと同じ轍を踏まぬと、サイズを拡大し高価格帯へシフトしました、見た目は一眼レフそのものです。今までのような一眼レフとコンパクトカメラの間というイメージを脱却しました。
  • FUJIFILM X-T1 2014/2/15
  • Olympus OM-D E-M1 2013/10/11
  • Panasonic Lumix DMC-GH4 2014/4/24

キヤノンとニコンのミラーレスは失敗?

一方、2強と呼ばれたキヤノンとニコンのミラーレスは一眼レフ入門機の差別化のためか相変わらず小型軽量にこだわっています。そのためモデルチェンジを機に大きく月産台数を下げています。

月産台数の推移
  • キヤノン EOS Mは10万台 → EOS M2が2万台
  • ニコン Nikon 1 J1 は6.5万台 → Nikon 1 J3で3.5万台へ
特にキヤノンはEOS M2は事実上 欧州市場から追い出され撤退状態です。

メーカーはどう思っているのか? デジタルカメラマガジン2015年1月号のインタビューが参考になります。

Q:昨年から一眼レフの売れ行きが鈍化してきている。その理由はなんでしょうか?


キャノン
A:数量的に減っているのはエントリークラスのモデルです。このクラスは市場が一巡してしまったのが原因でしょう。製品のインターバルが少し長くなって、進化が遅くなってきているように思います。進化が見いだせないと買い換え需要を起こせません。

エントリークラスにおいて、買い換え需要を喚起させる魅力ある商品の提案ができてないのではないでしょうか。そのあたりが改良されればまだまだエントリークラスの一眼レフも伸びる可能性があります。

われわれとしては魅力ある商品を提案していかなくてはいけません。ただし、新興国ではまだまだ伸びています。インドやブラジルなどは二桁成長が続いています。

ニコン
A:カメラ機能の進化がゆっくりになってきて、その結果、買い換えサイクルが延びてきていますし、市場在庫の問題もあったのではないでしょうか。撮影機能の進化レベルがゆっくりで、それに伴い買い換え需要が下がってきているようです。

新しいお客さまの開拓をしていくなど盛り上げていくことを日々考えています。

ソニー
世界中で落ちてきているのは事実ですね。考えてみると、すでにある程度のクオリティのカメラは一巡しているんです。そこで、お客さまが買い換えたい、とか買い増したいというモチベーションが減ってきているのではないでしょうか。

それは私たちの責任でもあるのですが、お客さまにとっての満足できる技術革新がないことなども原因だと思います。

富士フイルム
ひと言でいえば、ミラーレスカメラの技術進化と、交換レンズが充実した本格的なミラーレスカメラの登場が影響しているのでしょう。一眼レフカメラの市場が成熟してきて、さらに技術進化の鈍化もその原因ではないでしょうか。

パナソニック
一眼レフ志向の愛好家の需要が一巡し、かつミラーレス機の熟成が進み、それが認知された時期が重なったと推察しております。

オリンパス
潜在的なユーザー数も含めて考えると将来はミラーレスカメラがメジャーになっていき、一眼レフカメラのほうがニッチな市場になっていく可能性が大きいかもしれません。

一眼レフカメラは右肩あがりに成長してきましたから、どこかで伸びが落ち着くのは仕方がないことでしょう。カメラの性能が上がってきて、お客さまの買い替えサイクルも長くなってきているのも原因かもしれません。

Q:ミラーレスカメラが徐々に売れ行きを増しています。その理由は?

キャノン
A:ミラーレスもこのところ伸びが止まっています。ここ数カ月のデーターを見ると。ミラーレスのブームも一巡して、あとは定常走行に入っていくのではないでしょうか。

ニコン
A:小型化と高画質化が要因ではないでしょうか。いままでの一眼レフでできなかったことができることもあるでしょう。

ソニー
A:お客さまに満足してもらえる性能のミラーレスカメラが出てきたからだと思います。ミラーレスが小さい軽いだけのコンパクトカメラの延長ではなく、カメラとしてのクオリティの高さが認められるようになったことも要因です。

富士フイルム
ユーザーのカメラ(一眼レフとミラーレス)に対する見方が明らかに変わってきたことだと思います。

パナソニック
ミラーレスの存在に対する認知とともにミラーレスの熟成が進み、ミラーレスならではの小型軽量は元より、ミラーレスにしかできない使い勝手、LVFによる動画撮影等が評価されてきたのではないでしょうか。

オリンパス
ひとつには女性やこれから写真を始める中高年層のお客様に、小型軽量というメリットを訴求するなどして市場拡大する努力をしてきました。その結果があらわれてきたのではないでしょうか。

もうひとつは、OM-Dのような上級機が出てきたことで、ミラーレスカメライコール入門者向けという考え方がされなくなったことや、「小さな高級一眼レフカメラ」と評価していただけるようになってプロやハイアマのお客さまが増えたことだと思います。

負け組の条件 その3 「あがりのない双六」

半導体製造技術の進歩でフルサイズ撮影素子の製造コストが下がり「〝頑張れば手が届く〟フルサイズの時代」がニコン D600シリーズやキヤノン EOS 6Dにより到来しました。

赤字メーカーは未だに主力がAPS-Cフォーマット以下のカメラですし、APS-Cフォーマットからフルサイズへの移行はレンズを再開発する必要があり高い参入障壁になります。

2013年度唯一の前年比100%を超えたのはカメラ本体ではなく35mmレンズの出荷金額です。35mmレンズは日本だけで無く欧・米・アジア全地域で拡大しました。

※CIPA レンズ交換式カメラ用レンズ生産出荷実績表 2013年(1~12月累計) PDF

ニコンとキヤノンの年間販売数の構成グラフ

フルサイズフォーマットの生産数はニコンが約20%、キヤノンが15%と推測されます。

年間生産数はニコンが約100万台、キヤノンは104万台と構成的には少ないですが、フルサイズの平均売価は20万円を超えています。これはAPS-Cフォーマット搭載カメラがニコンは約6.7万円、キヤノンは5.2万円なので、フルサイズはAPS-Cと比較し5〜6倍の値段で売れるカメラであるということです。

スマホやコンパクトデジタルカメラから、APS-Cやマイクロフォーサーズフォーマットに、さらにフルサイズへステップアップするフルラインアップを揃えるメーカーはやはり強いということなんでしょう。

富士フイルムが参入すればレンズもありますし面白い存在になると思います。またペンタックスがCP+ 2015でフルサイズ機のモックを展示し話題になりました。


デジタルカメラ 世界販売台数実績シェア


2013年の世界販売シェアで日本はデジタルカメラが85.0%、レンズ交換式カメラは98.6%を占めています。

デジカメでは液晶テレビやスマホのように韓国サムスンにいいようにやられていません。

ただし精密技術の塊である一眼レフと違い、ミラーレスの参入障壁はレンズ以外になにもありません。そのうち台湾や中国メーカーの安価なカメラが急伸する可能性は高いです。

デジタルカメラが世界シェア1〜3位を独占できている、最後のモノ作りの砦が崩壊するのかより強固な砦になるのか注目したいと思います。